• ホーム
  • >
  • コラム
  • >
  • 【チーム成果を上げる仕事術】上司部下のいい関係編①“部下力”から考える上司部下のいい関係

【チーム成果を上げる仕事術】上司部下のいい関係編①“部下力”から考える上司部下のいい関係

2022.09.27

皆さま、こんにちは。ツナグ働き方研究所の客員研究員の小田木です。
このツナケン!コラムにおいて、『チームで成果を上げる仕事術』というコンセプトで、記事を書かせていただきます。
今回の記事は“部下力”。上司に“上司力”(≒いわゆるリーダーシップやマネジメント力)が求められることは誰もが実感があると思います。では、“部下力”という観点はありますか?
今回は、この“部下力”に着目しながら、上司部下のいい関係について考えていきたいと思います。


上司は“上司力”を磨き、部下は“部下力”を磨く

”部下力”と聞いてどんなイメージ持ちますか?
「上司の言うことをなんでも聞く従順な部下になるためのスキル」、ではありません。

ここでの“部下力”とは、「上司次第の部分をできる限り小さくし、上司と適切に関わりながら仕事を前に進めることができるスキル」と定義させていただきます。

つい私たちは、いろいろなことが上司次第だと考えてしまいます。

「上司が××だから」、「上司が××してくれないから」、「今の上司とは合わないから」、だから難しいという具合です。もちろん、事実そうした状況もあるでしょう。

しかし、上司と言ってもいろいろな人がいます。タイプも様々。特に組織の中だと選べない上に、異動で変わっていくことが多い。
ということは、いろいろあるけれども、仕事で起こるあらゆる状況や難しさを上司に依存してしまうと、仕事の上での上司の影響が大きくなりすぎてしまうのです。これは、チームにとっても、部下にとっても望ましいことではありません。

上司が“上司力”を磨くことが求められるのと同じように、部下も“部下力”を磨き、それにより円滑な関係構築、仕事におけるパフォーマンスの発揮をしやすくする発想が必要ではないかと思うのです。

では、“部下力”とは具体的にどんなスキルなのか、そしてそれを上司部下の関係性や仕事のやり方にどう活かしていくのか、順番にご説明します。


部下力①上司に完璧を求めすぎない力

ここでは、特に重要だと思う部下力にスポットを当てて紹介します。一つ目は、上司に完璧を求めすぎない力です。
「人間だれしも完璧ではないし、完璧な人なんていない」。頭では理解していても、なぜか私たちは「上司」という言葉に、「優れた人である(そうでなければならない)」という固定概念を強く持ってしまいます。
例えば、ビジョンを描くことができ、一人ひとりのメンバーをサポートし、私のことを誰よりも理解してくれ、いつもポジティブで、仕事は完璧で、自信に満ちて決断力があって、絶対に間違えないし、困った時は先回りして手を打ってくれる…、こんな感じのイメージ。
相手に対して完璧であって欲しいという気持ちが芽生えるとどうなるか。そうです、相手に過剰に期待してしまうのです。

過剰に期待してしまうと、その期待を満たせないとストレスが生まれます。一方で、ものすごく依存する気持ちも芽生えてきます。
そうなると、自分自身もしんどいのですが、さらに厄介なのは、仕事の上では問題の本質が見えなくなることが多々起こります。

例えば、「上司が決めないから」。こう思った瞬間に、誰でも自覚なく思考停止してしまいます。
本当は違う要因も存在したり、自分がアプローチできる課題があったりしても、そこにもう目が向かなくなってしまうんですよね。結果、パフォーマンスが低下し目指す成果が出しにくくなり、仕事が楽しくなくなってしまう。
こうしたスパイラルが、「上司は完璧な人でないといけない」という思い込みに端を発して生まれやすくなるのです。


完璧な上司はいないことを受け入れるところからはじめよう

じゃあ、どう考えればいいのかは簡単です。上司も私たちと同じ“フツーの人“、「上司に完璧を求めすぎない」。ここがスタートです。
失敗するし、悩みもあるし、調子がいい時もあれば、悪い時もある。一人ひとり違うから、得意なことも違うし、価値観だって多様。これを受け入れていくことが大事だと思います。
パートナーシップとか親子関係も同じですよね。受け入れることによって、自分の見方や行動を変え、相手との関わり方を変えていくことができるようになるのだと思います。

一方で、「頭では理解するが、なかなか実践は難しい」という声も聞こえそうです。

特に、相手に「変わって欲しい」、「期待に応えて欲しい」という想いは上司部下どちらの立場にも強固です。

そんなときにおすすめなのが、「そうきたか!」という受け止め方。

自分の期待に添わない反応や対応があった場合に、まずは「そうきたか!」と心の中で叫びましょう。このリアクションにより、期待通りでない状況を否定せず(むしろ面白く)受け止めることが可能になります。そこから、自分の相手への期待に気づき、すれ違っている部分を言葉で補足していくことができるでしょう。ぜひ、お試しください。


部下力②何をしてほしいか具体的な言葉で伝える力

ふたつ目は、上司に期待していることを具体的な言葉で伝える力です。

例えば、目の前の相手が何も説明せずに、「私が何をしてほしいかわかりますよね?」と言ったらどうでしょう。はっきり言ってわかりませんよね。それと同じことです。
つい上司に「察して欲しい」という期待を持つ気持ちは分かります。しかし、どんなに近しい相手であっても、自分の考えていることを100%察することは不可能です。
だからこそ私たちは、具体的なアドバイスが欲しいのか、それとも話を聞いてほしいのか、決断の後押しをして欲しいのか、自分に対するフィードバックを求めているのか、上司に対して期待することを、具体的な言葉でタイミングや程度感も含めて伝えていくことが重要なのです。


期待や希望を伝えないことによる“すれ違い”を無くそう

私は、部下側の立場の方から上司との面談や1on1の相談や報告をよくいただきます。
報告いただく結果は、大きく2パターンに分かれ、1つはうまくいきました、いい話し合いができましたというパターン。もう1つは、期待していた話ができませんでした、自分が思い描いた面談になりませんでした、といった「残念な結果だった」というパターンです。

後者の話を聞いてみると多いのが、面談のスタート時に、「この面談時間をどう使いたいか」、「この面談に何を期待しているか」といった“面談への期待”を自分から伝えて上司とすり合わせることなく、なんとなく中身に入って時間が過ぎてしまうケースです。
例えば、上司は業務確認や事務連絡ができればいいだろうと思っていて、こちらは今の役割だとか、中長期のキャリアについて話をしたいと思っていた。これが噛み合わないまま時間が過ぎてしまうのは本当にもったいないですよね。

上記は面談の事例でしたが、様々なシーンで自分は相手に何を期待しているか、具体的に何をしてほしいか具体的な言葉で伝えることが大事だと実感するには十分な想像ができると思います。

「そうは言っても、上司に希望を伝えるのは難しい」という方へ。
伝える際の“枕詞”でずいぶん、伝え易さ、また伝えた場合の印象が変わります。
具体的には、「私の本音を言ってみてもいいですか」や、「具体的な希望があるのですが聞いてもらえますか」という“お伺いモード”の枕詞です。
大抵の上司は(私もそうですが)、部下の本音を聞きたいと思っています。「思っていることがあるなら言って欲しい」という心情です。上記の枕詞を添えることで、上司に「ぜひ聞かせて」と言ってもらうことができますので、ずいぶん伝え易さが変わるはずです。もちろん、上司から部下にも使える枕詞です。こちらもお試しください。


“部下力”から考える上司部下のいい関係

部下力とは、相手への過剰な期待を手放し、自分の望むことを具体的な言葉で伝えること。
まとめるとこういうことですが、多様な相手と上司部下のパートナーシップを組んで仕事を進めるうえでは欠かせない観点ですよね。

上司は“上司力”を磨き、部下は“部下力”を磨く。この双方の歩み寄りが、上司部下のいい関係には欠かせないものだと改めて実感します。

かつて私も、上司の不満を言いながら、仕事が楽しくないとモチベーションを下げていた時期がありました。今振り返ると、上司のせいにしながら自分の課題から目を背けていたのだと分かりますが、そうした状況をどうしていいのか分からない自分も存在したのだと思います。
部下力の認知が広がり浸透することにより、働くメンバーの仕事の景色が変わること、何よりチームで仕事をすることが「自分次第で楽しくしていける」という手応えに代わる方が、ひとりでも増えるといいなと思います。